どうでもいい話だが、いつごろだったか、着流しに雪駄の団鬼六、黒のスーツと黒のシャツに真っ赤なネクタイのドクター中松が、和装で厚化粧の年増のオカマ二人を連れて、歌舞伎町をぶらついているのに出くわしたことがある。なぜだか、背中の毛をゾロリと逆なでされたような気がした。以前、いまどきワンレン・ボディコンのゴリラ顔のオカマが、通りすがる若い男を手当たり次第に肘を捕まえて、誘惑しようとしていた辺りだった。昨年数十人が一瞬にして死んでしまった近辺、と言ったほうが世間的には通りがいいかも知れない。不良中学生のように四人は見るからに無目的にふらついている、という感じだったのが、余計に不気味であった。これが歌舞伎町の底力なのだな、と脈絡もなくそんなふうに確信した。
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